名古屋大学 トランスフォーマティブ生命分子研究所WPI-ITbM

分子で世界を変える:化学・生物学・理論科学が融合する場所

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WPI-ITbMの夢は、私たちの生活を大きく変える革新的な生命機能分子「トランスフォーマティブ生命分子」を生み出すことです。名古屋大学の強みである合成・触媒化学、動植物生物学および理論科学の融合によって、大きな社会的波及効果をもたらしうる新たな研究分野を創生することを目指します。

研究の目標

トランスフォーマティブ生命分子を生み出す融合研究

歴史を振り返ると、ペニシリン(抗生物質)、タミフル(抗インフルエンザ薬)、生命現象を可視化する緑色蛍光タンパク質(GFP)などの数々の著名な分子が世界を変えてきました。WPI-ITbMは、このような生命科学研究・技術を根底から変える革新的な生命機能分子をトランスフォーマティブ生命分子と定義し、これらを生み出すことを目標としています。合成化学者、動植物生物学者、および理論科学者のダイナミックな連携・融合を通じ新たな研究分野を開拓し、社会に大きな影響を与えるトランスフォーマティブ生命分子の開発を目指します。2020年、WPI-ITbMは新たな重点的研究領域(ITbM2.0)を設定し、環境問題、食糧問題、医療技術の発展などの世界的重要課題を分子で解決すべく研究を推進しています。

拠点長:吉村 崇

(拠点長からのメッセージ)

2022年4月よりWPI-ITbMの拠点長に就任いたしました。私たちの夢は分子の力で世界を変えることです。WPI-ITbMは2012年の発足から10年の節目を迎えましたが、これまでの第一章では、合成化学、生物学、計算科学の融合研究によって、数多くの有望な分子を開発してきました。今日地球では食料安全保障、気候変動対策、健康的な生活の確保など、全人類の持続的な将来に不可欠な重要課題が山積しています。WPI-ITbMの第二章(ITbM2.0)では、これまでの研究をさらに加速、発展させることで、これら人類にとっての重要課題の克服を目指すとともに、新たな分野を切り拓いて参ります。

(プロフィール)

名古屋大学大学院農学研究科にて博士号を取得(1999年)。名古屋大学農学部助手、同准教授等を経て、2008年より名古屋大学大学院生命農学研究科教授、2013年より本研究所教授、2013年~2019年基礎生物学研究所客員教授。2022年より本研究所拠点長。英国内分泌学会国際賞(2010年)、英国王立生物学会フェロー(2011年)、米国甲状腺学会ヴァンミーター賞(2015年)、アショフ・ホンマ生物リズム賞(2020年)、木原記念財団学術賞(2021年)などを受賞。

特徴・研究成果

多様性豊かな環境が融合研究を促進させる「ミックス」

WPI-ITbMには、世界を牽引するトップレベルの研究者が国内外から参画しています。海外PI 5名をはじめ、多くの海外出身の若手教員や博士研究員が参画し、女性研究者も3割を占めており、多様性の高い環境で研究者が育成されています。WPI-ITbMは、異なる分野の研究者が共に研究活動を行う「Mix Lab(ミックス・ラボ)」および「Mix Office(ミックス・オフィス)」を設置し、異分野融合を促進しています。研究分野・国籍・性別などにとらわれず自らの知的探究心に基づき最大限に力を発揮できる環境を提供し、研究者が日々わくわくしながら研究に取り組むことで、数多くの生命機能分子が生み出されてきました。この取り組みを大学院教育にも反映させるべく、関連する研究科等とともに卓越大学院「トランスフォーマティブ化学生命融合研究大学院プログラム(GTR)」を発足させました。

アフリカで猛威を振るう寄生植物ストライガの撲滅

アフリカの穀物生産に大打撃を与える寄生植物「ストライガ」を駆逐する画期的な分子「SPL7」の開発に成功しました。SPL7は、穀物や土壌細菌などの生物環境への影響が少なく、極めて低濃度(1/1013-15mol/L)でストライガの自殺発芽を促します。これは、自然界の発芽刺激分子に匹敵するものであり、SPL7は最高の活性を持った人工分子です。現在、ケニアでSPL7のフィールド試験を行い、実用化に向けた検証を進めています。この成果は第7回アフリカ開発会議(TICAD7)の文部科学省主催公式サイドイベントで取り上げられました。

■自殺発芽によるストライガの駆除

SPL7 を用いて強制的にストライガの種子を発芽させることで、ストライガの種子を土壌から除くことができます。

土屋 雄一朗、浦口 大輔、大井 貴史ほか(2018年「Science」誌に論文発表)

概日時計のリズムを変え哺乳類の疾病や食料生産を変えうる分子

ヒト培養細胞の概日時計のリズムを遅らせる「GO289」、リズムを速くしマウスの時差ボケを軽減する「DHEA」、植物のリズムを遅らせる「AMI-331」、さらには、メダカを用いてうつ病を改善する「セラストロール」を発見しました。概日時計は睡眠・覚醒など1日周期のリズムを支配し、その機能が乱れるとさまざまな不調をもたらすことが知られています。哺乳類から植物まで幅広い生物の概日時計の分子メカニズムの解明を進めることで、睡眠障害、うつ病、肥満、がんなどの疾患の改善や食料生産の向上が期待されます。

■概日時計のリズムを変え哺乳類の疾病や食料生産を変える ITbM 分子

概日時計の分子メカニズムの解明を進めることで、睡眠障害、うつ病、肥満、がんなどの疾患の改善や食料生産の向上が期待されます。

廣田 毅 ほか(2019年「Science Advances」誌に論文発表)
吉村 崇 ほか(2018年「EMBO Molecular Medicine」,2020年「PNAS」誌に論文発表)
中道 範人 ほか(2019年「PNAS」,「Plant Direct」 誌に論文発表)

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