東京科学大学(旧 東京工業大学) 地球生命研究所WPI-ELSI

地球と生命の起源を探る世界トップレベルの融合研究拠点

拠点ロゴ
地球惑星科学および生命科学分野の世界一線級の研究者を結集し、「生命の起源」は「地球と惑星の起源」と不可分であるというコンセプトのもと、これらの起源への問いに挑戦します。さらに、生命惑星地球の特殊性と普遍性に注目しつつ、太陽系内および系外の生命探査研究も進めていきます。

研究の目標

地球はどのように生まれ、生命を育み、進化してきたのか

WPI-ELSIの研究テーマは、「地球はどのように生まれ、生命を育み、進化して来たのか」、そして「地球以外でも生命は発生するのか」という人類の根源的な謎の解明です。その理論的枠組みと研究の道筋を示すものが、ELSIモデル(右図)です。ELSIモデルは、宇宙の始まり(ビッグバン)から現在の生命までを、多様化と選別という過程の連鎖として捉えるユニークな考え方を表しています。

拠点長:関根 康人

(拠点長からのメッセージ)

WPI-ELSIは最初の10年間で、現在の地球生命系を生み出した一連の多様化と淘汰のメカニズムについての見解を示してきました。次の段階として、地球生命系の誕生に至る重要な変遷を理解するという試みを維持しつつ、さらに宇宙における別の惑星生命系を理解し、その存在を予測するための新しいアプローチを模索していきます。また、「地球と生命の起源と進化」から「地球外生命の兆候探し」へと研究範囲を広げ、宇宙探査ミッションと密接に連携していきます。

(プロフィール)

惑星の大気と海洋の起源と進化、および太陽系におけるハビタビリティ(居住可能性)についてのトップレベルの専門家。2015年には、土星の衛星エンケラドスに現在も継続している熱水系が存在することを明らかにした。惑星に生命を誕生させ、維持するための環境因子と同環境における化学反応を理解することで、「何が地球をハビタブルな惑星にしているのか」、「太陽系には地球以外に生命が存在するのか」といった未解決問題を解き明かすための研究を行っている。

特徴・研究成果

開かれた魅力的な融合研究の拠点

WPI-ELSIは、次のような改革を通し、世界を牽引する研究・教育拠点であり続けます。

研究環境

  • 異分野の研究も受け入れるオープンでフラットな研究体制
  • 毎年の業績評価と研究者へのフィードバック
  • 若手研究者のキャリア形成を支援する研究スタートアップファンド
  • 企業からの寄付で始まったアストロバイオロジープログラムなどユニークな外部資金の獲得

教育分野での活動

  • 英語による5年間の大学院プログラム
  • 全額出資の学生奨学金を競争制で毎年最大10名に供与
  • 「産業界との研究連携」と「グローバルサイエンスコミュニケーション」コースを開設

広報活動

  • 効率的な活動を実現するためのエビデンスに基づいたアウトリーチの実践
  • サイエンスコミュニケーショントレーニングやワークショップの実施
  • 国際基準の英語コンテンツ制作

太古の岩石はマントルの中に保存されている

マントル対流は地球内部から熱を取り除き、プレートテクトニクスを駆動する役割を果たします。しかし地球化学的データによると、対流と物質混合が続いたにもかかわらず、マントルのどこかに太古の物質が44億年以上も保存されている証拠があります。この結果を説明するために私たちは、マントル物質輸送の新しいモデルを作りました。私たちの対流シミュレーションによると、マントルは全体としては対流し循環するにもかかわらず、粘性の高いマントル物質の領域は安定して存在し、流れはこの領域を壊さずにその周りを循環します。この結果は、循環するマントル内の二酸化ケイ素量が太陽系の平均組成よりも低いこととも合致します。

Ballmer M., Houser C., Hernlund J., Wentzcovitch R., Hirose K. Persistence of strong silica-enriched domains in the Earth’s lower mantle. (Nature Geoscience, 2017)

地球電気化学── 生命の起源についての新しい研究分野

私たちは、地球化学的にもっともらしい条件下で、生物を介さずに電気化学的反応だけで、二酸化炭素から一酸化炭素への転換(還元反応)が起こりうることを示しました。一酸化炭素は複雑な有機物合成の原料として長い間提案されてきたことから、この発見は重要な意味を持ちます。私たちは、熱水噴出孔で得られる電位差が還元反応を促進し炭素固定を推進したのではないかと考えています。

Kitadai N., Nakamura R., Takai K., Li Y., Gilbert A., Ueno Y., Yoshida N., Oono Y. Geoelectrochemical CO production: Implications for the autotrophic origin of life. (Science Advances, 2018)

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