物質・材料研究機構(NIMS) ナノアーキテクトニクス材料研究センターWPI-MANA

マテリアル・ナノアーキテクトニクス─新材料開発のための新しいパラダイム─

拠点ロゴ
私たちの生活を変えつつあるナノテクノロジー。WPI-MANAは、新材料・新機能をつくり出すため、「ナノアーキテクトニクス(ナノ建築学)」と呼ばれる新しい技術体系(パラダイム)で材料開発を進めています。

研究の目標

次世代材料を生み出す「ナノアーキテクトニクス」

WPI-MANAは、2007年の設立以来、ナノスケールでボトムアップから材料を構築する『ナノアーキテクトニクス』のコンセプトのもと、多くの世界トップレベルの研究成果を発表してきました。『ナノアーキテクトニクス』研究は、物質の原子・分子レベルの構造を精密制御することで発現する量子機能を扱う「量子材料分野」と、二次元ナノシートや一次元ナノワイヤーなどの革新的なナノマテリアルを扱う「ナノ材料分野」が密接に連携して発展し続けています。
WPI-MANAは、人類の豊かで持続可能な発展を支えるため、環境、エネルギー、資源、食糧、インフラ、情報、通信、診断、医療、安全など、あらゆる分野を支える革新的な次世代材料・技術を創っていきます。

拠点長:谷口 尚

(拠点長からのメッセージ)

2020年からの新型コロナウイルス禍の克服を経て、今般グローバルな視点で多様な取り組みがなされようとしています。この取り組みにおいて、先端の科学的な知見、技術革新から導かれる貢献を目指すことは自然科学、物質科学研究者としての重要な認識と言えましょう。WPI-MANAにおいてはナノアーキテクトニクスの概念の下で、ナノマテリアルの開発とその能動的な集積化、界面制御によるナノシステムの統合を基盤とした新材料、デバイス、システムの開発、さらにこれまで培ってきた技術、知見の量子技術イノベーションへの展開を目指しています。これらナノテクノロジーを駆使した新材料開発により、近年人類が直面している多様な課題の解決への貢献を目指します。

(プロフィール)

1987年東京工業大学総合理工学研究科博士課程修了。同年東京工業大学工学部無機材料工学科助手。1989年科学技術庁無機材質研究所入所。2001年物質・材料研究機構(NIMS)に改組、主席研究員。2018年 NIMS フェロー。2019年国際高圧力科学技術連合(AIRAPT)副会長、東京大学生産技術研究所客員教授。2021年ナノアーキテクトニクス材料研究センター(WPI-MANA)センター長。

特徴・研究成果

挑戦と分野融合が原動力、世界を代表するナノテク研究拠点

WPI-MANAは、WPIプログラムのミッションを達成するため、以下の研究環境を提供し、「目に見える」世界トップレベル研究拠点を目指しています。
メルティングポット環境
多彩な国籍、文化で育った研究者が集って話し合い、新たな研究テーマを生み出す「メルティングポット環境」を実現しています。この環境が、多様な融合を生み、優れた研究成果の源となります。

デバイス自ら学習して判断する「意思決定イオニクスデバイス」

WPI-MANAは、経験をイオンや分子の濃度変化として記憶し、デバイス自ら迅速に意思決定を行う「意思決定イオニクスデバイス」を発明し、その動作実証に成功しました。このデバイスでは過去の経験をコンピュータのメモリで蓄積する必要がなく、それに基づく意思決定のための計算処理も不要のため、状況変化に効率的に適応して判断を行うことができます。このデバイス開発により、ソフトウェアの働きでデジタル情報処理をする従来の人工知能(AI)システムと全く異なり、ハードウェアの物性を利用してアナログ情報処理を行う新しいAIシステムの開発が期待されています。


水素イオンの移動による電気化学現象を利用して学習と判断を行う意思決定イオニクスデバイス

土屋 敬志 主幹研究員、鶴岡 徹 主席研究員、寺部 一弥 WPI-MANA 主任研究者(2018年「Science Advances」誌に論文掲載)

磁性の効果により増強された熱電変換材料

熱電変換は熱から電力を取り出すことができるため、IoTデバイスの動作電源として期待されています。そのため、熱電材料のパワーファクターを大きくすることが重要です。WPI-MANAは、弱い強磁性体と呼ばれる金属において、強磁性転移温度Tc付近で熱電能が急激に増大することを発見しました。この現象は、熱から電力へのエネルギー変換が、スピン揺らぎによってより効率よく行われるためと考えられます。今後、室温付近で動作する高性能の熱電材料開発が加速することが期待されます。


Fe ドープ Fe2V(Al,Si)の温度依存熱電能。この物質はTc=285K以下で強磁性体であり、Tc付近で50%の熱電性能増強が認められる。
これは、吸収した熱から電子へのエネルギー伝達効率が、スピン揺らぎにより促進されるためだと考えられる。

辻井 直人 主幹研究員、森 孝雄 WPI-MANA 主任研究者(2019年「Science Advances」誌に論文掲載)

関連記事