東京大学 カブリ数物連携宇宙研究機構Kavli IPMU (WPI)

数学と物理、天文の連携で宇宙の謎に迫る!

拠点ロゴ
現代基礎科学の最重要課題である暗黒エネルギー、暗黒物質、統一理論(超弦理論や量子重力)などの研究を数学、物理学、天文学における世界トップクラスの研究者の連携によって進め、目に見える国際研究拠点の形成を目標としています。

研究の目標

宇宙の起源と進化の解明を目指す

最近まで宇宙全体は原子だけから出来ていると考えられてきました。しかし今では、銀河には「暗黒物質」が含まれていることが分かっています。そうでないと、星が飛び散ってしまい、銀河が形成されないからです。さらに、宇宙は「暗黒エネルギー」と呼ばれる不思議なエネルギーで満ちていて、宇宙の膨張を加速させていることも分かっています。しかし、これらの正体についてはまだなにも分かっていません。超弦理論や量子重力など「究極理論」と呼ばれる理論の発展とビッグバンやブラックホールの物理学および数学の間には密接な関係があると考えられています。Kavli IPMU(WPI)はこのような深淵な宇宙の謎に迫ります。

拠点長:横山 順一

(拠点長からのメッセージ)

カブリ数物連携宇宙研究機構(Kavli IPMU)は、2007年に東京大学柏キャンパスに設立され、2012年から米国カブリ財団の支援を受けています。設立から16年が経過し、WPI 拠点として世界的な評価を頂いています。研究所には常勤研究員が90名おり、その60%を外国人研究者が占めています。毎年10回以上の国際研究会議を開催し、国内外から1,000人以上のビジターが訪れるなど、大学内において真に国際的な研究環境を維持し、世界トップレベルの研究成果を生み出しています。数学、超弦理論、素粒子物理学、宇宙論、天体物理学など幅広い分野の理論や実験の研究者が連携し、宇宙の基本的な性質を明らかにすることで、人類の未来に貢献していきます。

(プロフィール)

1989年に東京大学理学部物理学科助手としてキャリアをスタート。フェルミ国立加速器研究所、京都大学基礎物理学研究所、スタンフォード大学、大阪大学を経て、2005年に東京大学大学院理学系研究科附属ビッグバン宇宙国際研究センター(RESCEU)教授に就任。2023年11月に Kavli IPMU 機構長に就任。2020年から2022年にかけてアジア太平洋物理学会連合会長を務め、現在は RESCEU のセンター長も務める。

特徴・研究成果

数学、物理、天文の分野を超えた融合型研究拠点

数学、物理学、天文学を含む様々な分野の280名を超える研究者(連携研究者含む)が、分野の垣根を超えて共同研究を行なっています。毎日午後3時にはティータイムが行われ、その場での会話がきっかけとなった世界トップレベルの研究成果が次々と発信されてきました※。異分野融合の積極的取り組みによる研究活動の発展だけでなく、外国人研究者の受入体制の拡充により構成員の半分以上は外国人研究者という非常に国際的な研究所へと成長しました。ダイバーシティーの取り組みにも力を入れており、異なる考え方や属性、異なる文化、異なる分野間の活発な交流による新しいアイディアや洞察を今後も生み出そうとしています。
※新型コロナウイルスの影響により現在は感染対策を施した上での開催とし、交流を図っています。

超広視野多天体分光器PFSの装置が続々とハワイに到着

Kavli IPMU(WPI)を中心とした国際チームにより製作が進められている超広視野多天体分光器 PFS(Prime Focus Spectrograph)プロジェクトでは、2024年本格観測開始を目指して、各国で製作してきた装置を続々とハワイのすばる望遠鏡へ運び、搭載試験やテストを行っており、昨年秋からは本格的な試験観測も開始しました。約2,400本の光ファイバーで一度に幅広い波長範囲での分光観測が可能で、ダークマター・ダークエネルギーの謎の解明や銀河進化の歴史に迫ろうとしています。


図 . PFS の全体像の模式図。 (Credit: PFS Project/Kavli IPMU/NAOJ)

田村直之特任准教授、矢部清人特任研究員、森谷友由希連携研究員らが参加

LiteBIRD 衛星計画が進行中

Kavli IPMU(WPI)は、参加機関の一つとしてLiteBIRD衛星計画を推進しています。本計画は、宇宙マイクロ波背景放射(CMB)の偏光観測から原始重力波の痕跡を検出し、インフレーション宇宙論仮説の検証を目指しています。JAXA宇宙科学研究所の戦略的中型衛星2号機として2019年に選定されました。日本学術会議が策定したマスタープラン2020の「重点大型研究計画」の一つにも選定されています。2020年代後半の打ち上げを目標に準備が進められており、Kavli IPMU(WPI)は低周波望遠鏡の偏光変調器とデータ解析を担当しています。偏光変調器はインフレーション偏光信号が特に優位となる大角度スケールの精密偏光観測を実現するために鍵となる観測装置です。科学目的から様々な観測要求を導出し、性能実証を実現しています。


LiteBIRD 衛星に搭載する偏光変調器の CAD モデルおよび実証のための超電動磁気軸受回転機構とサファイアのためのミリ波広帯域反射防止微細加工。
(Credit:ISAS/JAXA, Y. Sakurai et al., T. Hasebe et al., R. Takaku et al.)

片山伸彦教授、松村知岳准教授、羽澄昌史特任教授らが参加

関連記事