大阪大学 免疫学フロンティア研究センターWPI-IFReC

免疫学の統合的理解と社会への貢献

拠点ロゴ
WPI-IFReCは、拠点設立時から、病原体感染や自己免疫疾患、がん細胞に対する免疫反応とその制御を目標に据えて研究してきました。これは、個々の免疫細胞の働きを明らかにしつつ、全身で起こる免疫反応を深く理解することです。WPIアカデミー拠点となって以降、高度な基礎免疫学の研究に加えて、それらの社会還元への動きも加速させています。

研究の目標

融合研究とともに免疫研究の頂点を目指す

WPI-IFReCは、2007年のWPI研究拠点設立時から、先端的研究課題に取り組むために、免疫学、バイオイメージング、バイオインフォマティクス各分野の優れた研究者を集めて融合研究を推進してきました。こうしてインパクトの高い論文が多くのトップジャーナルに掲載され、また数々の学術賞を獲得することで、世界の免疫研究者の間にWPI-IFReCの名前を浸透させることができました。2017年以降は、基礎研究のさらなる追求と同時に、研究成果の応用展開を図るためのシステム・組織作りに取り組んでいます。

拠点長:竹田 潔

(拠点長からのメッセージ)

2019年7月よりWPI-IFReCの拠点長に就任いたしました。これまで WPI-IFReCが推進してきた融合研究による免疫学の基礎研究の深化のみならず、将来の免疫関連疾患克服を目標に世界的な研究センターを目指します。そのために WPI-IFReC は複数の製薬会社と包括連携契約を結び、国内では初めてのモデルとなる自由な基礎研究を推進する産学連携システムを構築しています。さらに将来の免疫学を担う若手研究者の育成と各国研究機関との国際連携も推進していきます。世界トップレベルの免疫学の基礎研究とその社会還元を加速化する WPI-IFReCにこれからもご注目ください。

(プロフィール)

大阪大学医学部卒業、医学博士。大阪大学微生物病研究所を経て、2004年 九州大学生体防御医学研究所教授。2007年 大阪大学大学院医学系研究科/ IFReC 兼任教授、2019年7月より IFReC拠点長。
日本免疫学会賞(2004)、日本学術振興会賞(2010)、大阪科学賞(2016)、ベルツ賞(2016)、持田記念学術賞(2019)、Highly Cited Researchers 選出 (2014-2017)。論文引用数による免疫学者世界ランキング2014で第2位(第1位は審良静男前拠点長)。

特徴・研究成果

世界に冠たる研究拠点として

WPI-IFReCは研究成果を社会に還元するための一環として、最新の解析技術や研究環境を整えた「ヒト免疫学研究室」を立ち上げました。ここでは、大阪大学医学系研究科の協力のもと、ヒト細胞を用いた基礎研究を推進します。ここに製薬会社の視点も取り入れて、基礎研究の社会還元すなわち新規創薬・新規治療法開発を加速させていきます。
次世代の研究者を育てることも重要な責務です。WPI-IFReCが2011年から主催してきた若手研究者対象の免疫学ウインタースクールの教育内容をさらに充実させていきます。また、報酬・研究費を欧米諸国の標準に近づけた「アドバンストポスドク」制度を作り、世界公募で優秀な若手研究者をリクルートしています。WPI-IFReCは次世代の研究者が来たくなるような環境を提供し、グローバルな頭脳循環の場を目指します。

免疫記憶成立のメカニズムを解明

B細胞、T細胞といったリンパ球は、細菌・ウイルスなどの感染症において、免疫の中心的役割を担います。病原体の2度目の侵入時には、1度目の感染時にできた記憶B細胞が素早く抗体産生細胞(プラズマ細胞)に分化し、効果的に抗原をブロック・除去します。一方で、免疫記憶の仕組みを利用して、B細胞に人為的に記憶を誘導するのがワクチン療法です。
井上毅准教授、黒﨑知博教授らの研究グループは、ワクチン療法の基本原理である免疫記憶の中心を担う記憶B細胞が、胚中心B細胞から効率的に分化誘導されるメカニズムを明らかにしました。この研究は、毎年のワクチン接種が必要か?といった問いに答えるための基礎データを提供するものであり、革新的なワクチン開発につながる可能性があります。


B細胞から記憶B細胞への分化には、低代謝状態と濾胞ヘルパーT細胞からB細胞への生存シグナルが必要

井上 他 J Exp Med. 2021

新型コロナウイルス感染を増強する抗体を発見

新型コロナウイルスのスパイクタンパク質の受容体結合部位(RBD)に対する抗体は、ヒトの受容体であるACE2との結合を阻害することにより、新型コロナウイルスの感染を抑える中和抗体として重要な働きをします。一方でスパイクタンパク質の他の部位に対する抗体の機能は不明でした。荒瀬尚教授らの研究グループは、COVID-19患者由来の抗体を解析することにより、新型コロナウイルスに感染すると感染を防御する中和抗体ばかりでなく、感染性を高める感染増強抗体が産生されていることを発見しました。感染増強抗体の産生を誘導しないワクチン開発に対して重要な成果です。


スパイクタンパク(Spike)のN-末端領域(NTD)に抗体が結合すると感染性が増大する

Liu 他 Cell 2021

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