物理学、生態学、数理科学を統合して紐解く海洋生態系変動
研究の目標
地球システム変動と海洋生態系の応答・適応機構の予測
海洋物理学、生態学、数理・データ科学を融合したアプローチにより、1. 気候―海洋―生態系の相互作用、2. 海洋生態系の環境への応答・適応メカニズム、3. 海洋生態系の変動予測、の研究に挑みます。海洋生態系が広い範囲で急激に構造を変える「レジームシフト」と呼ばれる現象に着目しつつ、生物地球化学データを含む海洋観測、eDNA分析、室内実験等を利用し、海洋生態系の維持に重要な連動性・安定性・適応性の理解を深めます。更に、AIなどを活用し、海洋物理―生態系ビッグデータの統合解析を進め、現実の海に適用可能な海洋生態系変動モデルを構築します。それにより、新しい学術領域として「海洋・生態系変動システマティクス(Ocean-Ecosystem Change Systematics)」の創成を目指します。
拠点長:須賀 利雄
(拠点長からのメッセージ)
海洋学は、海の物理学・化学・生物学に分かれて発展してきました。諸現象の理解は進みましたが、研究が深化するほど相互の理解は難しくなりました。他方、環境変化に対する海洋生態系の変化の問題に取り組むためには、個別の分野を一体的に扱う融合研究が不可欠となってきています。我々は、海洋生態系に関する学問を融合するアプローチにより、気候―海洋―生態系の相互作用、海洋生態系の環境への応答・適応、海洋生態系の変動予測の研究に挑んでいきます。本拠点の研究活動により創出される「科学知」を国内外のステークホルダーと共に「総合知」へと発展させ、海洋および生態系の再生と回復に向けて強力に貢献する所存です。
(プロフィール)
海洋物理学を専攻し、海洋力学と、気候および海洋生態系における海洋力学の役割に焦点をあててきました。アルゴ・プログラムに関連した研究を主導し、生物地球化学的アルゴ・フロートによる先駆的な学際的観測を行い、多くの科学的成果を挙げてきました。 国際アルゴ運営チーム(AST)の主要メンバーであり、共同議長としてアルゴのグローバルかつ学際的な観測網への拡大に貢献しました。その科学的業績から、2019年のIPCC「海洋・雪氷圏特別報告書」の主執筆者を務めました。
特徴・研究成果
東北大学の研究教育とJAMSTECの最先端の海洋研究機能の融合
東北大学の基礎研究や教育に関する高度な機能と、JAMSTEC の海洋調査や計算基盤の海洋研究の最先端の機能を連携させて活動する仕組み(インターラボラトリーシステム)を構築します。この連携体制の下に、幅広い分野から世界トップクラスの研究者や優秀な若手研究者約100 名を結集します。また、東北大学・JAMSTECと強い連携関係にあるハワイ大学を国際サテライト拠点と位置付け、同大学の海洋研究の機能とも結びつけることで、先端的な国際分野融合研究を推進します。同時に、海外の研究者と共同で大学院生を指導する国際共同大学院プログラムを発展させることにより、国際的な頭脳循環を活性化させ、世界で活躍する次代のグローバル人材を育成します。
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