WPIの研究を支える人たちREADING

手続、生活、メンタルという広い範囲で外国人研究者に「安心」を提供する姿勢を。(上)

外国人研究者は皆、慣れない土地に着任して少しずつ日本のシステムや文化に慣れて生活していきます。サポートする側としては、彼らの戸惑いを受け入れて、困っていることをひとつずつクリアし、安心を与えていくことが必要となります。大阪大学IFReCの小川真智子さん・石井由美子さんは、外国人研究者のメンタル面でのサポートも含め、「安心」を提供するために、日々、様々な業務を行なっています。

【取材・文:清水修、写真撮影:山内城司】

大阪大学 免疫学フロンティア研究センター(IFReC)

小川 IFReCが設立されたのは2007年10月1日。私はその半月後の10月16日に着任しました。現在まで12年間、在職していることになります。最初はまだ現在のIFReCの建物はなくて、大阪大学微生物病研究所の建物に事務部がありました。最初のPIが着任したのが2008年10月です。総務と会計だけの8人くらいの小さな事務組織だったので、外国人研究者サポートも含めて、すべての仕事を全員でやっていくかんじでしたね。私自身は、IFReC着任より以前には通訳の仕事をしていました。

石井 私は2010年1月に着任しました。在職9年目になります。IFReCに着任する前は大阪大学の他の部局に在職していました。そこでも外国人対応をしていたのですが、IFReCよりも外国人の数は少なく、長期で滞在される方も少なかったので、本格的な外国人研究者サポート業務はこの拠点に来てから経験しました。最初は総務に所属していましたが、2012年から2014年の間は「リエゾンオフィス」という部署があり、そこに所属して外国人研究者サポートをやっていました。今ではすでにリエゾンオフィスがなくなって、外国人研究者サポートは事務部全体でやるようになりました。現在、小川さんはPI秘書、私は企画室とPI秘書を兼任しています。

【 拠点設立時からの経験を蓄積して事務手続フローを構築 】

小川 「できる限り、事務スタッフがサポートをしますから、研究者は研究に専念してください」というのがIFReCの特長ですので、外国人研究者サポートに関しても、最大限の対応をしてきたという実感がありますね。長年、外国人研究者の受入業務をやってきたので、現在のIFReCでは必要な手続を順序よく効率的に行っていくというフローができあがっています。少しその流れを紹介しますと……まず、ある外国人研究者のPI採用が決まったら、自国にいる間に日本大使館に赴いていただき、「教授ビザ」を取得していただきます。その取得手続のサポートを私たちがメール等で行います。申請時にこちらから提出しなければならない書類が多数ありますので、それらをお送りします。ビザ取得が完了したら、今度は日本に来てから必要になる情報をお送りします。いよいよ着任という段階になったら、まずは空港にお出迎えに行きます。拠点が設立された最初の頃は着任の人数も少なかったので、ポスドクの方も空港にお出迎えに行っていました。キャンパスに到着したら、キャンパス内の宿泊施設にお連れしてチェックインします。家が決まるまではそこに宿泊していただく形になります。チェックインが済んだら、一緒に市役所に行って、住民登録(外国人登録)等の手続きを行います。

石井 現在は空港で「在留カード」が発行されますが、以前は外国人登録も市役所でやる必要がありました。

小川 共済や雇用保険の手続はIFReCの事務部で行います。それから、ご自分の印鑑を作ってもらって、金融機関の口座を開設していただきます。

石井 銀行では「外国人の方は来日して半年経過後でなければ口座を作れません」というところが多いんです。その点、一番フレキシブルなのは、ゆうちょ銀行ですね。住民票を用意すれば口座を作ることができます。着任した外国人研究者とともにキャンパス内の郵便局に行って口座を開設します。

小川 ちなみに、ゆうちょ銀行の場合、口座開設はすぐにできるのですが、海外への送金が可能になるのは7ヶ月後になりますね。

【 生活スタート支援では個々のニーズに対応 】

小川 事務手続がひと通り終わったら、その後は生活サポートになりますね。携帯電話がほしいということなら一緒に携帯電話ショップに行きます。それから自転車購入もリクエストが多いです。

石井 IKEAのリンクをメールで示して「これがほしい」という方も多いです。現在はオンライン購入ができますが、以前はできなくて、買えるところを探したりもしていましたね。

小川 生活スタート支援はそれぞれのリクエストをうかがって対応するわけですが、やはり、その後はご本人が困った時に相談を受けて対応することが多いです。出張申請や物品購入をオンラインで申請する場合、日本語サイトしかないのでサポートが必要になります。また、企業の助成金などに応募する場合、日本語の要項しかないことが多いので英訳して内容を伝えたりもしています。

石井 税金の話などは文章にまとめて送っても日本の税制度を知っている方は少ないのでなかなか理解してもらえません。納付の通知が来てから個別に相談されることが多いですね。それから、「自動車免許を取りたい」、あるいは「免許の書き換えの手続をしたい」という方も多いですね。書き換えの手続には同行してサポートします。

小川 フリーランスで外国人に免許取得の指導をしている方がいらっしゃって、その方に指導をお願いすることが多いです。英語対応可能なので。外国人研究者には、その方の指導を受けてもらってから、自動車試験場に試験を受けに行ってもらっています。

石井 事務的な内容からそのような生活のことまで、とにかく英文で情報を蓄積しておくことがとても大切だと思います。文法的な正確さなどはあまり気にせずにこまめに英文にして情報を蓄積していけば、後々、まとめて整理することができますから。

小川 IFReCでは、過去に何度も、蓄積した情報をまとめて「日本での生活ガイド」を作っています。とても役に立つのですが、まあ、あまり読んでくれません(笑)。困った時は直接、相談してくる方が多いです。


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